据置型の渦流探傷器は、工場や検査室などに機器を設置し、金属部品や配管などの検査に使用する機器です。PCを使った波形の確認や検査データの記録・解析に対応する機種もあり、品質管理や設備の保守検査、研究開発などに活用されています。
選定時には、検査対象の材質や形状、検出したいきずの種類に加え、周波数範囲やチャンネル数、使用するプローブ、データ管理機能などを確認することが大切です。
本記事では、据置型の渦流探傷器の用途や選び方を解説するとともに、据置運用を検討できる製品を紹介します。なお、メーカーによって製品の分類や使用方法が異なるため、据置専用機と、設置して使用することもできるコンパクト型・可搬型の機器を区別して取り上げます。
据置型の渦流探傷器は、検査場所に機器を設置し、プローブを通じて金属などの導電性材料を検査する機器です。渦流探傷では、コイルに交流電流を流して生じる磁界を利用し、試験体に発生する渦電流の変化から、きずや材質の違いなどを調べます。
据置運用では、PCや専用ソフトを使用して検査信号を確認・記録したり、測定条件を調整してデータを解析したりする使い方も可能です。多周波数や多チャンネルに対応する機種であれば、複数の信号を組み合わせた検査や、複数のプローブを使った検査にも対応できます。
ただし、対応できる検査方法や機能は機種によって異なるため、導入前に、検査対象と必要な性能を明確にしておくことが大切です。
据置型の渦流探傷器は、金属部品のきず検査や、設備の保守検査、検査条件の検証などに利用されます。主な用途は次の通りです。
実際に検出できる欠陥や判別できる材料特性は、材質・形状・きずの方向・プローブ・検査条件などによって異なります。事前にサンプル試験を行い、必要な検出性能を確認することが重要です。
据置型は、検査場所が決まっており、一定の環境で繰り返し検査を行う現場に向いています。例えば、次のような環境が挙げられます。
一方、屋外や高所など、機器を持ち運んで検査する必要がある現場では、バッテリー駆動の可搬型が適することもあります。量産ラインで全数検査や自動判定を行いたい場合は、ライン用の探傷器や周辺設備との連携も含めて検討しましょう。
据置型の渦流探傷器を選ぶ際は、検査方式や解析機能、チャンネル数、外部機器との接続方法などを比較する必要があります。ここでは、保守検査向けの機種や検査設備への組み込みに適した装置を先に紹介し、その後、携帯型やアレイ探傷器などの関連製品を取り上げました。製品によって用途や携帯性が異なるため、検査環境に合う機種を確認しましょう。
ACTUNIが提供する保守検査向けの多重周波数・多チャンネル型渦流探傷器です。PC上で操作でき、検査データの収集後に位相角度や振幅値を確認できるほか、検査報告書の作成にも活用できます。
4チャンネルのプローブを独立して使用でき、複数の周波数を利用した検査にも対応しています。熱交換器チューブの検査など、複数のチャンネルや周波数を活用する保守検査で候補となる機種です。
PCと接続して使用する単周波数型の渦電流探傷器です。Windows上の専用ソフトウェアから操作でき、検査波形の確認や拡大、位相角度・振幅値の解析などに対応しています。
採取した波形やデータは保存でき、ほかのアプリケーションで活用することも可能です。単一周波数を使った検査とデータ確認を重視する現場で比較候補になります。
電子磁気工業が提供するデジタル渦電流探傷器です。タッチパネルによる操作に対応し、試験周波数は1~5,000kHz、設定感度は0~100dBです。
波形の保存や時間軸波形の表示が可能で、設定条件の記憶・呼び出しにも対応しています。検査条件を切り替えながら測定し、取得した波形を保存・比較したい用途に適した機種です。
原電子測器が提供する汎用の渦流探傷電子装置です。必要な機能を絞った構成で、貫通コイル、回転型プローブ、内挿型プローブなどに対応しています。
チャンネル数は1チャンネルで、記録計出力や自動探傷制御、マーカー遅延などの機能を備えています。定尺材やエンドレス材の自動探傷にも対応しており、検査システムの構成に応じて比較したい機種です。
なお、工場の自動探傷設備に組み込む用途が示されているため、据置での手動検査を目的とする場合は、使用するプローブや周辺装置を含めて適合性を確認しましょう。
携帯型で、複数の渦流検査方式に対応する高機能な渦電流探傷器です。ECT(渦電流探傷)やECA(渦電流アレイ探傷)をはじめ、RFT(リモートフィールド)やNFT(ニアフィールド)などに対応しています。
ECTの周波数範囲は5Hz~10MHzで、ECAでは64・128・256チャンネルの構成を選択できます。専用ソフトウェアのMagnifiをPCにインストールし、LAN接続で探傷操作を行う仕組みです。
検査対象に合わせて、多様なプローブや検査方式を使い分けたい場合に適した機種です。バッテリー駆動にも対応しているため、電源の確保が難しい場所での検査も検討できます。
渦流アレイ探傷に対応した機種です。周波数範囲は20Hz~15MHzで、最大4周波の検査に対応しています。
位相平面やストリップチャートに加え、Cスキャンによる画像表示も備えています。最大32コイルのアレイプローブや対応する回転スキャナーを組み合わせた検査にも対応。バッテリー駆動式のため、AC電源を確保しにくい場所でも使用できます。
複数の周波数やアレイプローブを使用した表面検査に対応する渦流アレイ探傷器です。最大8周波の検査と、最大128チャンネル(絶対方式64チャンネル+比較方式64チャンネル)の構成に対応しています。
10.1インチのディスプレイを備え、位相平面やストリップチャート、Cスキャンなどの表示が可能です。外部機器との連携にも対応しており、周辺設備と組み合わせた運用にも活用できます。
複数の周波数やアレイプローブを使った表面検査に対応しており、複数の信号や検査結果を画像で確認できることが特徴です。
表面検査向けの渦流アレイ探傷器です。Cスキャンによる画像表示に対応しており、探傷信号を画像として確認しながら解析できます。
SmartMUXを内蔵し、構成に応じて32・64・96チャンネルのアレイ検査に対応します。タッチスクリーンを備え、AC電源またはバッテリーで動作するため、検査場所に応じた運用が可能です。
アレイ探傷による表面検査を重視する場合に比較候補となります。こちらも据置専用機ではなく、持ち運びを含めた運用を想定した機種です。
据置型の渦流探傷器は、機種によって対応する周波数やプローブ、解析機能などが異なります。必要な性能を整理したうえで、実際の検査条件に合う製品を選ぶことが大切です。
機器選定では、まず検査対象や狙うきずに適した周波数範囲を確認します。周波数によって渦電流の浸透深さや信号特性が変わるため、材質・厚み・きずの種類に応じた適切な設定を行いましょう。
マルチ周波数対応機であれば、複数信号の比較や、不要な信号を抑える演算処理が可能です。例えば熱交換器チューブの検査では、支持板由来のノイズを低減するために多周波数解析が活用されます。
ただし、周波数の多さがそのまま検出精度の高さに直結するわけではありません。検査目的を明確にし、必要な周波数と解析機能を見極めることが重要です。
チャンネル数や信号の切り替え方式は、扱える検査信号やプローブの構成に関わる重要な項目です。複数箇所の検査や複数の信号を組み合わせた評価を行う場合は、同時に測定できる範囲を踏まえ、必要なチャンネル数を把握することが大切です。
プローブにはペンシル、内挿、貫通コイル、アレイなど多様な種類が存在します。機器ごとに接続方式や対応プローブが異なるため、検査対象の形状や範囲に適した組み合わせを選ぶ必要があります。
なお、既存のプローブを流用する際は、コネクター形状や電気的仕様、変換アダプターの要否など、機器との適合性にも注意が必要です。
検査データの記録や活用を重視する用途では、解析ソフトやデータ管理機能が重要な比較項目となります。波形の保存・呼び出しに加え、測定条件や検査対象情報の記録、事後再解析の可否を事前に確認してください。
また、報告書作成を伴う場合は、画像や測定結果の出力機能が求められます。PCとの接続方式や、既存データ管理システムとの連携可否を含めた事前の要件定義が重要です。
据置運用を想定する渦流探傷器には、検査信号の表示や解析、データ保存など、検査を効率化するための機能が備わっています。ただし、搭載される機能や操作方法は機種によって異なります。
インピーダンス平面表示は、取得した信号を平面上に描き出し、振幅や位相の変化を視覚的に確認する機能です。きずに由来する信号と、形状変化などに由来する信号を比較・識別する際に利用されます。
ミキシングは、複数の信号を組み合わせ、不要な信号の影響を抑えながら、きず信号を評価しやすくするための演算処理です。多周波数を利用する検査などで活用されますが、適用条件や得られる効果は検査対象によって異なります。
検査データの記録機能があれば、取得した波形や検査条件を保存し、後から確認することが可能です。機種によっては、測定終了後に波形の表示範囲や位相などを変更し、記録したデータを再解析できます。
こうした機能は、検査結果の確認や報告書の作成、検査条件の見直しに役立ちます。検査データの保存期間や管理方法、PCへの転送方法も事前に確認しておきましょう。
機種によっては、PCやタブレット、スキャナー、記録装置などの外部機器と接続できます。また、制御信号やアラーム出力を備えた機器では、周辺設備との連携を図ることも可能です。
ただし、接続できる機器やインターフェースは製品によって異なります。導入後に必要となる制御やデータ連携を整理し、対応する端子・通信方式・ソフトウェアを確認してください。
渦流探傷器には、検査場所に設置して使うタイプのほか、生産ラインに組み込むインライン型や、現場へ持ち運ぶポータブル型があります。それぞれ得意とする用途が異なるため、検査対象や運用方法に合わせて選ぶことが大切です。
以下は、主な運用方法による一般的な違いです。実際の用途や設置方法は製品によって異なり、据置運用と自動検査の両方に対応する機種もあります。
| 比較項目 | 据置型 | インライン型 | ポータブル型 |
|---|---|---|---|
| 主な使用場所 | 検査室・工場内の定位置など | 生産ライン | 工場内・屋外・設備の点検現場など |
| 主な用途 | 保守検査・精密検査・データ解析 | 量産品の連続検査・全数検査 | 現場での点検・個別検査 |
| 運用方法 | 機器やPCを設置して検査 | 搬送設備や制御機器と連携して検査 | 作業者が持ち運び、手動などで検査 |
| 選定時のポイント | 解析機能・プローブ構成・データ管理 | 処理速度・自動判定・設備連携 | 重量・電源・携帯性・耐環境性 |
据置型は、検査データの詳細な解析や定位置での継続的な検査に向いています。量産工程の連続検査にはインライン型、現場での点検にはポータブル型が適しています。
なお、製品によっては据置運用と持ち運びの両方に対応しているため、機器の名称だけで分類せず、実際の設置方法や用途、対応機能を確認することが重要です。
併用できる構成もあります。例えば、生産ラインの連続検査にはインライン型を、抜き取り検査や不具合品の詳細確認には据置型を活用する運用が考えられます。
ただし、データの一元管理や判定基準の統一を図るには、出力形式や解析条件、データ連携方法の事前確認が必要です。運用目的に応じた最適なシステム構成をメーカーへご相談ください。
導入費用は、本体性能、チャンネル数、プローブや解析ソフトの有無、周辺設備の構成によって大きく異なります。既存設備との連携や特注対応が必要になると、追加費用が発生することもあります。
参考価格だけで判断せず、検査対象・必須機能・設置条件を整理して見積もりを依頼しましょう。実機や部品を用いた事前のサンプル試験を実施すれば、最適な構成をより具体的に検討できます。
渦流探傷器は、スペックだけを見て選ぶと、実際の検査対象の形状や設置環境と合わず、キズの見逃しや過検知が現場で頻発することがあります。
自社の現場で効果を発揮する1台を選べるよう、検査シーン別におすすめの機種を調査しました。
| 寸法(mm・W×H×D) |
|---|
| 370 × 149 × 350 |
| 寸法(mm・W×H×D) |
|---|
| 211 × 133 × 317 |
| 寸法(mm・W×H×D) |
|---|
| 279 × 254 × 158.8 |