金属部品の検査手法を選定する際には、「実際にどんなメリットとデメリットがあるのか」「他の手法と何が違うのか」を把握しておくことが、適切な機器選定の出発点となります。
本ページでは、5つのメリット・デメリットの整理から、他の主要な探傷方法との比較、向く用途・向かない用途、メリットを引き出す運用のポイントまでを解説します。
渦流探傷は、コイルを内蔵した検査用センサー(プローブ)を用いて、検査対象に接触させずに検査する非接触方式を採用しています。製品を傷つけるリスクがないだけでなく、センサーの摩耗も防げるため、インラインでの連続検査において安定した運用が可能です。
渦流探傷では、検査前後の洗浄・乾燥・脱磁といった処理が一切不要になります。検査工程がシンプルになるため、前後工程のトラブル要因(洗浄液の漏れ・乾燥ムラ・脱磁不良など)を巻き込まずに済み、工程全体のサイクルタイム短縮と安定稼働の両立につながる点も利点です。
プローブのコイルが流す高周波電流で生じる渦電流の変化を、電気的に検出します。検査速度が速く、量産ラインを止めることなくリアルタイムで全数検査が可能です。
一定のサンプルを取り出して行う抜取検査に比べ、見逃しリスクを大幅に低減できます。
渦流探傷は電磁誘導を利用した検査方式のため、検査対象の表面に冷却水・工業油などの薄い液膜が付着した状態でも検査が可能です。
加工直後の部品をそのまま検査ラインに流せる分、洗浄・乾燥工程を省けるため、量産環境における運用コストという観点でも優位性があります。
渦流探傷の検査結果は電子データとして記録が可能です。履歴の管理や統計的な分析にも活用でき、自動車部品や量産工程で求められる品質監査やトレーサビリティ管理にも対応しやすい方式となっています。
渦流探傷は電磁誘導を利用するため、金属製品など電気を通す導電性材料にしか適用できません。非導電性の材料は検査対象外となるため、導入前に検査対象の材質を確認する必要があります。
検出できる欠陥は、表面付近のきずに限られるのが特徴です。金属の内部・深部に存在する欠陥は深さ数mmまでは検出可能(表皮効果の浸入深さによる)ですが、それ以上は検出が困難なため、その場合は超音波探傷など別の手法を検討する必要があります。
プローブと検査面との距離(リフトオフ)が変動すると、検査精度への影響が避けられません。そのため、凹凸の激しい形状や段差、曲率の大きい面などの複雑形状は、そのままでは検出が難しくなる場合があります。
渦流探傷の特性をより明確に把握するため、浸透探傷試験(PT)・磁粉探傷試験(MT)・超音波探傷試験(UT)・放射線透過試験(RT)の4手法と、共通の項目で比較したものが以下です。
| 手法 | 対応材料 | 検出可能な欠陥 | 全数検査適性 | 前処理 |
|---|---|---|---|---|
| 渦流探傷(ET) | 導電性金属 | 表面・表面付近 | ◎ | 不要 |
| 浸透探傷(PT) | 多孔質以外 | 表面開口きず | △ | 多 |
| 磁粉探傷(MT) | 強磁性体のみ | 表面・表面直下 | △ | 磁化・脱磁 |
| 超音波探傷(UT) | 多くの金属 | 内部欠陥 | △ | カプラント要 |
| 放射線透過(RT) | 金属・非金属 | 内部空洞 | ― | 安全管理要 |
| 比較項目 | 渦流探傷(ET) | 浸透探傷試験(PT) |
|---|---|---|
| 対応材料 | 導電性材料(金属など) | 多孔質以外であれば金属・非金属いずれも対応 |
| 検出できる欠陥 | 表面および表面付近のきず | 表面に開口しているきず・割れのみ |
浸透探傷試験(PT)は、材料を問わず表面の開口きずを視覚的に検出できる手法ですが、前後の洗浄や浸透液の塗布・現像など多くの工程を要します。工程が多く自動化が難しいため、量産ラインでの全数検査には向きません。金属部品の表面検査を高速かつ自動で行いたい場合は、渦流探傷が適しています。
| 比較項目 | 渦流探傷(ET) | 磁粉探傷試験(MT) |
|---|---|---|
| 対応材料 | 導電性材料(金属など) | 磁石に吸引される強磁性材料のみ |
| 検出できる欠陥 | 表面および表面付近のきず | 表面および表面直下のきず・割れ |
磁粉探傷試験(MT)は強磁性体の表面きずに対して高い感度を持ちますが、強磁性体以外の金属には使用できず、検査前後に磁化・脱磁の操作が必要です。これに対して渦流探傷は、導電性があれば強磁性体以外の金属でも検査できます。
| 比較項目 | 渦流探傷(ET) | 超音波探傷試験(UT) |
|---|---|---|
| 対応材料 | 導電性材料(金属など) | 金属・溶接部・鍛造品など(粗粒材・鉛は困難) |
| 検出できる欠陥 | 表面および表面付近のきず | 溶接部・鍛造品などの内部きずの検出に適用 |
超音波探傷試験(UT)は、金属の内部深部にある欠陥の検出に優れた手法です。表面・表面付近のきずを高速に全数検査したい用途では、渦流探傷に優位性があります。
| 比較項目 | 渦流探傷(ET) | 放射線透過試験(RT) |
|---|---|---|
| 対応材料 | 導電性材料(金属など) | 金属・非金属材料など幅広く対応 |
| 検出できる欠陥 | 表面および表面付近のきず | 放射線の進行方向に奥行きのある内部欠陥 |
放射線透過試験(RT)は溶接部のブローホールや鋳造品の内部空洞など、表面からでは捉えられない欠陥を確認したいケースに向く手法です。一方、放射線に対する安全管理が必要なため、大がかりな設備と運用体制が求められます。
前処理が不要で高速検査が可能な特性から、インラインでの自動全数検査に適しています。具体的な対象としては、ベアリングやシャフトなどの自動車部品、鋼管、熱交換器の伝熱管などが挙げられます。
また、きずの検出だけでなく、材質違いや熱処理不良の検査にも活用できる点も特徴のひとつです。
電磁誘導を利用する特性上、電気を通さない非導電性の材料には適用できません。また、検出できる欠陥は表面付近に限られるため、内部深部の欠陥や空洞の確認が必要な場合は、超音波探傷試験や放射線透過試験など別の手法を選択する必要があります。
渦流探傷の精度は、プローブの形状や配置によって大きく変わるのが特徴です。丸棒や管の全周を検査する「貫通型」、パイプの内側を検査する「内挿型」、表面をなぞって走査する「上置型」など、ワークの形状や検出したいきずの向きに合わせた適切なプローブを選ぶ必要があります。
渦電流が試験体の表面から届く深さは、コイルに流す電気信号の周波数によって変わる仕組みです(表皮効果)。表面の微細なきずを狙う場合は高い周波数を、より深い層のきずを狙う場合は低い周波数を設定するのが基本で、材質の導電率や検出したい深さに応じて適切な周波数を選定することが精度向上につながります。
渦流探傷器は、あらかじめ既知の人工きず(スリットなど)を加工した標準試験片を用いて、検査開始前に感度の調整を行うことで、正確な判定が可能になる仕組みです。定期的に校正を行うことが、インラインでの誤検出や見逃しを防ぎ、検査精度を一定に保つ基本となります。
渦流探傷のメリットを引き出すには、検査対象に合ったプローブの選定、材質と検出深さに応じた周波数の設定、標準試験片による定期的な校正という3つの運用ポイントを押さえることが重要です。機器の導入にあたっては、製造現場の用途や検査対象に合った機種選びも合わせてご確認ください。
当メディアでは、「量産ライン」「凹凸・曲面」「R&Dなどの高度解析」の検査シーン別におすすめ機種を紹介しています。自社の検査現場に合う1台を見つける参考にしてください。
渦流探傷は、非接触・前処理不要・高速判定といったメリットを持ち、自動車部品や鋼管などの量産ライン全数検査において高い実用性を発揮します。一方で、導電性材料に限られる点や表面付近の検出に限定される点、リフトオフの影響を受けやすい点などが制約です。他の手法の特性と比較し、自社の検査目的や対象物の材質・形状に合致しているかを見極めてください。
渦流探傷器の仕組みやメリットなど、詳細な基礎知識については以下のページでご確認いただけます。
渦流探傷器は、スペックだけを見て選ぶと、実際の検査対象の形状や設置環境と合わず、キズの見逃しや過検知が現場で頻発することがあります。
自社の現場で効果を発揮する1台を選べるよう、検査シーン別におすすめの機種を調査しました。
| 寸法(mm・W×H×D) |
|---|
| 370 × 149 × 350 |
| 寸法(mm・W×H×D) |
|---|
| 211 × 133 × 317 |
| 寸法(mm・W×H×D) |
|---|
| 279 × 254 × 158.8 |