渦流探傷器できず・割れを検出できるかどうかは、「きずの種類」「ワークの形状」「ラインの速度」の3つでほぼ決まります。表面に開口した割れは検出しやすい一方、へこみきずや渦電流と平行に延びるきずは機種選定と検査条件の工夫が必要です。
本ページでは、きず・割れ検出を目的とした渦流探傷器の選び方を、きずの種類・機能・検査対象の3軸で解説します。
渦流探傷は、検査部位に近接させるセンサーであるプローブを用いることで部品に接触せずに行う検査です。探触子を水・ゲルなどの接触媒質を介して部品に接触させる超音波探傷と比べて、非接触での検査を重視する場面では渦流探傷が適しています。
前後処理工程が不要で、ラインの搬送速度を落とさずに全数検査を実施できる点は、渦流探傷を選定する大きな理由の一つです。
電磁誘導を原理とする渦流探傷は、加工油や切削・研削加工時の冷却・潤滑に使う液体であるクーラントが付着した状態でも安定した検査が行えます。そのため、切削・研削工程の直後にそのまま探傷工程を設けることができ、洗浄ラインを省いたライン設計が可能です。
渦流探傷では、きずの有無をコイルのインピーダンス変化(電気的特性の変化)として出力します。そのため、機種・構成によってはラインを制御するPLCや上位システムへのデータ連携が容易であり、判定結果の自動記録とトレーサビリティの確保にも対応しています。
検査記録の提出が求められる場合も、電気信号ベースの自動記録によってデータ提出の効率化が可能です。
渦電流はクラックなどの表面きずを避けて迂回するように生成されるため、きずの有無によって渦電流の流れ方に変化が生じます。渦電流の流路を阻害する形状であるほど検出しやすく、表面に開口した割れ・クラックは検出しやすいきずに分類されるのが特徴です。
鋳造工程で生じる鋳巣(表層部に残る空洞状の欠陥)や、加工時に発生するへこみきず・打痕・欠けは、表面に現れた形状変化として渦電流の乱れに反映されるため、渦流探傷で検出できます。
溶接不良の箇所や、ブローホール(溶接中に発生するガスによる気孔)・割れなど、表面のすぐ内側に位置する欠陥も渦流探傷の検出対象です。表面に開口したきずより検出の感度は下がるものの、検査条件の調整によって対応できます。
渦電流の流れる方向と平行に延びるきず(引掻きず・縦穴・非開口割れなど)は流路を阻害しにくいため、検出感度が低下する点に注意が必要です。また、プローブと部品表面の距離が変動するリフトオフ変動が生じやすい加工面では、この距離変化がノイズとなり、検出しにくくなります。
渦流探傷は、検査対象の表面に開口した割れやクラック、鋳巣・へこみきずなど幅広いきずを非接触で検出できます。一方で、渦電流と平行に延びるきずやリフトオフ変動が生じやすい加工面では検出感度が下がる点に注意が必要です。検査したいきずの種類やワークの状態を整理したうえで、その条件に見合った検査ができる機種を選ぶことで見逃し防止につながります。
当メディアでは、「量産ライン」「凹凸・曲面」「R&Dなどの高度解析」の検査シーン別におすすめ機種を紹介しています。自社の検査現場に合う1台を見つける参考にしてください。
ベアリング・シャフトなど回転体の全数検査では、部品がプローブを通過する際の微小な回転がリフトオフ変動となり、きず信号に近い波形変化を引き起こして誤検知(過検知)を招く要因です。ワーク回転検知機能は、回転に由来するノイズ成分ときず信号を分離し、誤ってNG判定をするリスクを抑えます。
1chタイプは1測定点の基本構成で単純形状の部品に適していますが、2chタイプはプローブを同時に2系統で運用できるため、2か所の検査を1回の搬送でまとめて行えるのが利点です。
工程削減につながるほか、将来の検査対象の追加に備えて1ch・2chのいずれにも対応できる機種かどうかをあわせて確認しておくと良いでしょう。
インライン組込みでは部品が搬送されながらプローブを通過するため、信号の取得速度が低いと高速搬送中のきず信号を取りこぼし、検出漏れにつながります。機器選定の際は、対象ワークの搬送速度に対して十分な信号取得速度を持つ機種かどうかを確認することが重要です。
量産ラインの全数検査は、NG品の自動排出装置やライン停止シーケンスとの連携が欠かせません。I/O端子(機器同士をつなぐ入出力インターフェース)を備えた探傷器であれば、PLCや搬送機・排出装置との配線によって検査から排出までを自動化できます。
鍛造・熱処理工程で発生する割れや、切削工程で生じるへこみきずの検出が主な目的です。割れは渦電流の流れを大きく妨げるため検出しやすい一方、へこみきずは検出信号が小さいため感度設定が重要なポイントとなります。
ベアリングを回転させながら検査するワーク回転検知機能を備えた機器を選定することで、誤検知を抑えられるのがポイントです。
軸方向に長い形状のシャフト類では、部品を搬送しながらプローブを全長にわたってスキャンする構成が一般的に採用されています。段差部やスプライン溝周辺はリフトオフ変動が起きやすいため、プローブの形状と検査条件を調整できる機器を選ぶことがポイントです。
小径の円柱形状が多く、部品を連続通過させて検査するインライン構成に向いています。タクトタイムが短い生産ラインでは、高速な信号取得に対応した機器であるかを確認してください。
鋼管・棒材・線材といった長尺素材は、JISで定められた方法で非破壊検査を実施する必要があります。渦流探傷器を選ぶ際は、対象規格に対応した検査条件を設定できる機種かを確認することが重要です。
長尺素材をラインに流しながら連続検査できる機器であれば出荷検査に組み込みやすいでしょう。内面検査が必要な場合は、挿入型プローブへの対応も確認してください。
きず・割れ検出向けの渦流探傷器を選ぶ際は、回転体に対応したノイズ除去機能、検査点数に応じたチャンネル数、ラインの速度に対応した信号取得速度、設備との配線連携、この4点を軸に機種を絞り込むことが安定稼働への近道です。コストを抑えながら全数検査を実現したい場合は、品質規格に沿ったインライン専用の機器を選ぶことが重要となります。
きず・割れ以外の検査目的も含めた選び方については、下記のページもあわせてご覧ください。
渦流探傷器は、スペックだけを見て選ぶと、実際の検査対象の形状や設置環境と合わず、キズの見逃しや過検知が現場で頻発することがあります。
自社の現場で効果を発揮する1台を選べるよう、検査シーン別におすすめの機種を調査しました。
| 寸法(mm・W×H×D) |
|---|
| 370 × 149 × 350 |
| 寸法(mm・W×H×D) |
|---|
| 211 × 133 × 317 |
| 寸法(mm・W×H×D) |
|---|
| 279 × 254 × 158.8 |